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TITLE2024.03.08

木と伝統工芸 桶屋 近藤を訪ねる -前編-

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滑らかな継ぎ目に、美しい木目。食べ物を美味しく見せ、また口当たりの良さも生んでいる、ほどよい厚み。見ても触れてもうっとりする佇まいの桶を京都で作っているのが、桶職人の近藤太一さんです。木材の仕入れから桶の仕上げまで、ひとつの桶ができ上がるまでの全ての工程を一人で行っています。桶作りの魅力や木材のこだわりなどをお聞きしに、京都市北区紫野にある工房「桶屋 近藤」を訪ねました。

■自然の作用を生かした構造

近藤さんはこちらの工房で木の桶作りを、それも全ての工程を1人で行っていると聞きました。具体的にはどのような作業になるのでしょうか?

―桶とは、細長い木片を大体15~20本組み合わせて、金属や竹の輪っかで締めて作る容器全般を指します。この輪っかを箍(たが)というので、桶は箍物(たがもの)とも呼ばれます。大小さまざまなカンナを使って木片を削り、それらを円形に並べ、仮輪をはめた後に、底板を押しこみ、木片がちょうど良い具合にはまったら、箍で締め、かためて仕上げます。こうした技法は鎌倉時代に中国や朝鮮から伝わったもので、その基本は当時からほぼ変わりません。

接着剤などは使っていないのですよね? 木片を組み合わせて、箍で締めているだけ。シンプルな構造にも関わらず、中に入れる水や水分が漏れないのが不思議です。

―箍が外側から締めこむと、底板は中から外に張る。そのバランスで形を保っています。もともと木は水を含むと膨張して、乾燥すると縮みますよね。ですから、水を入れると 側板も底板もグーッと膨らんで、全部密着する。その膨らんだところを、箍が抑え込んでいるので、より圧力がかかるんです。僕も作っていて、この作りを考えた先人たちは本当にすごいなと思います。

木の性質を生かした見事な構造ですね。一方で、そうした不確定要素がある自然素材を扱う難しさもありそうです。

―そうなんです。木が膨張した時には割れたりせず、縮んだ時にもバラバラにならない、その良い塩梅を見つけて仕上げていきます。特に、木と木の継ぎ目には慎重です。紙1枚でも入る隙間があれば、桶の形になった時には、その誤差は20倍にもなってしまう。ですので、1つ1つのパーツや工程を正確に仕上げていく必要があります。

―木片の成型の基準にするのが「正直型」と呼ばれるこの型です。1つ1つのパーツを、これに合わせることで、継ぎ目がほとんど見えない桶ができる。例えば、この木片を型に合わせてみると、ここに光が漏れている。これは漏れたらあかんのですわ。カンナで削って、そこをきっちり合わせていきます。

―ちなみに正直型はものすごく精密に作っていて、都度調整もしているので、精度が高い。師匠には、もし火事や地震など何かあった時は、「道具も大事やけど型持って逃げろ」みたいなことはよく言われました。

カンナの刃は、独特なカーブを描いていますね。まっすぐではない。

―刃は、中心が高く両端が低くなるように、特殊な研ぎ方をしています。削りたい箇所を、刃のどの部分に、どれくらいの力で通らせるか。それらを見極めながら、手の感覚を信じて削っていきます。

■桶作りの仕事には思想が詰まっている

近藤さんは木工芸家であり、重要無形文化財「木工芸」の保持者(人間国宝)でもある中川清司(きよつぐ)さんのもとで7年間の修業を経て、独立されました。もともと、どのようなきっかけで桶作りと出会ったのでしょうか?

―桶作りは僕の家業でもなんでもなく、ごく一般的な家庭で育ちましたが、ものを作ることは子どもの頃から好きでした。京都精華大学で立体造形や彫刻を学んでいた頃に、大学の先輩として、師匠の息子さんに出会いました。同じく木工芸家の中川周士さんです。大学卒業後、中川さんの家業がお忙しい時に声をかけてもらい、手伝いに行ったのが始まりです。

当時、桶作りの経験があったわけではないですよね? 何も知らない状態で、この世界に飛び込むことになったんですね。

―そうなんです。この工房は師匠の仕事場を手本に作ったので、イメージしやすいと思いますが、壁中カンナだらけで、古い道具が黒光りしていて。その中で、こういう白木の桶をほとんど手作業で作られていて。その世界観に衝撃を受けました。手伝いの期間は1ヶ月と決まっていたんですが、僕はもう「こんなおもろいことない」と思ってしまったんですよ。最終日に、もっと本格的にやりたいから続けさせてください、とお願いして、そこから結局7年間お世話になりました。

中川清司さんは、木の木目をぴったり合わせる柾(まさ)合わせの技法を確立したことで、広く知られています。近藤さんも、やはりそうした緻密で美しい作品に魅了されたのですか?

―師匠のところでは、これまで見たこともない、上質な洗練された桶をたくさん見て、こんなかっこいい桶を作ってみたいとも思いましたが、それ以上に僕がおもしろいと思ったのが、仕事の考え方の部分だったんです。桶は独特の形と作りなので、木工の中でも、機械使うところがほぼなくて、カンナのような手道具だけでコツコツ作る。ですから、ものすごく非効率に見えるんですけど、その工程の中には、なるべく早く、正確に、たくさん数を作れるように考えられた、合理的で無駄を削ぎ落とした考え方や、手早く作るための手順とかが、事細かにいっぱいあるんですよ。そこが素晴らしいなと。それを自分も身につけたいと思いましたね。

手仕事だからこそ、また歴史のある仕事だからこそ、そうした考えや手法が蓄積されてきた。この工房の見て取れる範囲からも、カンナが大きさ順に並んでいたり、床下が木屑入れになっていたり、照明のコードが伸び縮みしたり。工夫が随所に感じられます。

―先ほど正直型をお見せしましたが、あの型の角度に合わせて、パーツを削ることを「正直を押す」と表現するんです。要するに、水を漏らさない正確な桶を作るためには、手抜きをしたり、いい加減なことをしたらいけないと。外向きでも内向きでもない、ちょうどバッチリ合っているものを、正直に作らないといけないと。そういう意味が込められています。最初に教えてもらった時には、怖い言葉だなと思いましたけど(苦笑)。

次回は、木材の仕入れも自ら行う近藤さんに、木へのこだわりについてお聞きします。更新をお楽しみに。

桶屋近藤 https://oke-kondo.jimdofree.com/

近藤太一Instagram https://www.instagram.com/kondotaichi?ref=badge

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