木と暮らすデザインの現場を訪ねる「木と暮らし」
今回は,京都から世界のアパレルブランドにテキスタイル提供する「デザインハウス風」を訪問し,代表取締役社長の松井啓介さんと企画部チーフの大原正さんからお話を伺いました。
-小さな美術館-
北区の閑静な住宅地,大きな木に迎えられて建物に入ると1階のショールームには,色とりどりのテキスタイルがお出迎え。同社がこれまで生み出してきた図案や,世界的なファッションデザイナーに提供したものもあり,小さな美術館のようです。
-どう作られたかが問われる時代に-
60年にわたり世界のアパレルブランドにテキスタイル提供してきた「デザインハウス風」。現在,北山杉の間伐材などから抽出した染料で生地を染める「Raw Wood」の開発に取り組まれています。
部屋の一角には“おくどさん”のような抽出機械。機械もイチから開発し,木のチップを煮だしています。
製造時の環境負荷が高いと言われるアパレル業界。特に海外からはSDGsや環境負荷について問われることが多い。
かつては文学や映画,絵画の題材にも取上げられた美しい北山杉の景観。今では担い手の減少などで生産量も減少し,倒木なども目立つ光景に心を痛めていた松井さんたちは,何かできないかと考え,北山杉を使った染料の開発につながったとのこと。
この「Raw Wood」は,材料だけではなく,煮だすための燃料も木片を砕いて圧縮した「木質ペレット」を使用。その上,染料を抽出した後の木片は木質ペレットの原料に,燃え残った灰でさえも堆肥に利用するという,トコトン考え抜かれたエコシステムです。
自然の恵みを無駄なく大事に使い切る「始末のこころ」。ここにも京都らしさを感じました。
-「森を着る」-
「Raw Wood」で染め上げられた製品は,優しい「アースカラー」。森の光景に小さな動物たちが躍動する物語を感じるデザイン。染物をする際に,鉄成分を配合することもあるが,「より自然やひとに優しいものを」と,使わない方法を模索。和紙の糸で織りあげた生地に染めたものも!SDGs素材として,衣服,生活雑貨,アウトドア,インテリア,ベビー用品など幅広い活用を提案されています。
-「京都に来る人に楽しんでもらいたい」-
これまで,京友禅の技術を生かした「手捺染」によるプリントなど,グラフィックと伝統が融合した「made in KYOTO」にこだわってこられました。
「芸術大学,京都市交響楽団など京都には宝物がいっぱい」と語られる松井さん。北部山間地域の自然を生かした働き方などにも話が及びます。
今後は,京都に来た方々に京都の文化やモノづくり(手仕事)を通じて京都を楽しんでいただきたいと観光や宿泊業などとの連携にも意欲を示されています。
人と森が共に生き,持続可能な地域や社会に向けて,オシャレにかっこよく,松井さんたちの挑戦は続きます。
デザインハウス風 http://www.dhkaze.com/index.html#
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