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TITLE2024.03.24

木と工芸 工芸ディレクター・山崎伸吾さんに聞く -後編-

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前編では、各地の材を使ってきたという京都の伝統工芸の仕組みについて伺いましたが、いま京都では、地域産材を積極的に活用する動きが随所で生まれています。その一つが、大きな原木市場があり、京都府内産材が集まる京北。なかでも、そうした府内産材でほとんどの製品を製作しているのが、村山木工さんです。近年、農林業や木工シーンが盛り上がりつつある京北ですが、山崎さんの言葉を借りるなら、代表の村山伸一さんは「そのパイオニアのような人」。なぜ京北に工房を構えたのか? 京北の木をどのように活用しているのか? これからの地域産材の可能性を探るべく、山崎さんが村山木工を訪ねます。

杉・檜は100%京都の材

―(山崎)村山さんは指物や組子といった伝統工芸の技を駆使しながら、現代空間の内装やインテリアプロダクトの製作などと、ものづくりの領域をどんどん広げています。20年以上、京北に工房を構えていて、2017年にはここ(工房)を新設されていますね。昨年(2023年)には併設のカフェ&ワーキングスペースもオープンして、京北の新しい動きとして注目が集まっているのを感じます。もともと、どういう理由で京北を選んだのですか?

―(村山)僕の親父は木工職人で、額縁作りを専門にする家でした。当時は大変な仕事だと日々感じていたので、こんな仕事絶対やるもんかと思っていて(苦笑)。とはいえ、家業なので子供の頃から手伝わされますよね。それが、自分の技術のベースになってはいるのですが。
でも、やっぱり木工は嫌だったので、20代終盤まではミュージシャンを目指していたんですが、父が病気で倒れまして。そのタイミングで、家に戻り木工を本格的に始めました。そこからです、木工が楽しいと思えてきたのは。5年ほど父のもとで修行して独立しました。その時に工房を探したら、たまたま良い物件が見つかったのが京北でした。

―(山崎)京北は森林資源が豊富ですし、府内中の木材が集まる原木市場もあります。そういう地域産材を使おう、というイメージは当時あったんでしょうか。

―(村山)そんな気持ちは全くなかったです。当時は、木曽などの有名な産地へ買い付けに行っていました。でも長くやるうちに、材の質は、産地以上に、日当たりの差なんかに影響される個体差が大きい、と感じるようになりました。ならば、ということで、京北で仕入れるようになりました。今では杉・檜に関しては100%、京北で仕入れた府内産材を使っています。ごくたまに輸入材を使うこともあるので、全体でいうと95%程度は府内産材を使っています。

―(山崎)遠方へ買い付けに行く手間も省けるし、輸送費などのコストカットにもなりますよね。でも、どんな材でも使えるわけではないですよね?

―(村山)僕らの製品に向いている木はありますよ。例えば建材は強度が大事ですが、僕たちのような装飾品では、そこはあまり気にしなくて良い。それよりも、木目や色合いなどの見た目が綺麗である必要があります。更に僕たちの場合は、節や傷のある材でも構いません。小さく切り、それらのパーツを組み合わせて使うからです。みんなが使わない、という木を、昔から安く買わせてもらっています。

―(山崎)売れない材は、最終的にはベニヤ板とか燃料にされてしまうので、それは林業の方々にとってもありがたいですね。

―(村山)建築内装の場合、使う量がかなり多くなるので、その意味でも、少しは山林のお役に立てているかなと思います。

「広く浅く」が功を奏した。高級ホテルの内装

―(山崎)村山さんのところでは名だたるホテルの内装を手掛けていますが、家業だった額縁作りからその方向へ、どう変わっていったんですか?

―(村山)独立してしばらくは、主に節句の飾り物を作っていました。最も多かったのが雛飾りに使われる雛道具で、他にも正月飾りや七夕飾りなども作っていました。

―(山崎)生活様式が変わりつつある今、厳しい業界ではありますね。

―(村山)そうなんです。始めた頃は、冬から雛祭りにかけての時期はかなり忙しい思いをさせてもらっていて。毎日夜の12時頃まで仕事をして、それからお客さんのところへ深夜に納品しに行き、また注文をいただく、という生活でした。それが徐々に徐々に減っていって。15年前には、月の売上が10万円ほどになっていました。
そんな折に、パレスホテル東京の建替に合わせて、神殿(挙式会場)の内装の仕事をいただいたんです。着物デザイナーの友人に相談があり、彼が僕のことを思い浮かべて、連絡をくれました。リクエストは、「今まで見たことのない内装にしたい」というものでした。

―(山崎)いきなりパレスホテルですか……。

―(村山)当時は雛道具しか作っていない時代ですから、僕も、神殿!? 建築!? と焦りました。でもね、もう食えるか、食えないかの瀬戸際だったので「やります! できます!」と二つ返事で引き受けました。受けた以上はなんとか形に、と、1年半かけて完成させました。これが好評をいただきまして、その後、ありがたいことに他のホテルさんからも声をかけていただけるようになりました。

―(山崎)雛道具とは考え方がまるっきり違いますよね。同じなのは木を扱う点だけ。それを成功させるまでには、どんなプロセスがあったんですか?

―(村山)どんな仕事でも、お客さんには「無理難題なんでも言うてください」と伝えているんです。木だからこんなことできないだろう、というのは抜きにして、要望をそのまま投げかけていただきたい、と。すると、こんなのできたら面白いね、なんて夢物語みたいなやりとりから始まって、それをちょっとずつ詰めていき、うまくいった時に初めて、今までになかったものができあがります。
これ(組子のシャンデリア)も「曲がった組子作れへんの?」というお客さんの相談から始まったんです。最初、熱で曲げてみたら、当然バラバラに壊れてしまい。熱では曲がらないなあ、というところからスタートし、試行錯誤の末にやり方を見つけたんですよ。だから、なんでも真剣にトライして、それができ上がったら、結果、世の中にないものができ上がる。この流れは意識しています。

―(山崎)発想はかなり自由ですが、どれも指物の技術が生かされていますね。

―(村山)僕はたまたま雛道具を作っていたので、それが幸いしているかなと思うんです。一つの技術を突き詰めていたわけではなく、浅く広くいろんなジャンルの技術を習得していた。もちろん指物はプロですけど、その他にも刳物(くりもの)、曲物(まげもの)、挽物(ひきもの)など、本来、専門の職人さんがいるような作業を全部自分でしないといけなかった。

―(山崎)広い知識と技術。それが、あらゆるアイデアの実現を可能にしているんですね。

作り手を抱え込まない雇用

―(山崎)今から10年ほど前、京北の農林業や木工業はあまり元気がなかった印象があって。村山さんが内装の仕事をするようになり、作り手の雇用を積極的にしだしたことで、その流れが少し変わったように感じています。

―(村山)パレスホテル東京の仕事を受けた際に、僕一人では到底無理だと思い、人を採用することにしたんです。全国から広く募集しましたが、たまたま若い方の応募が多くて。以来、毎年のように新卒の方が入社してくれています。今ではスタッフは8人になりました。1人は既に独立して、金閣寺近くに自分の工房を構えています。

―(山崎)昔お会いした時に、京北を京指物の産地にしたい、とお話されていて。強く印象に残っています。

―(村山)うちは引き合いをたくさんいただいて、当然うちだけではできないので、協力会社さんにもお願いして、制作を進めています。今後はそうした連携をもっとたくさんして、協力会社さんが増えたり、もしくはうちから独立した子がそんな存在になったりすれば、いつかここ一帯が京組子の産地になるんじゃないかなと思います。大きな夢だけど、50年100年先にはあるかもしれません。

―(山崎)作り手を抱え込むのではなく、やがて独立するのを前提に雇用されているのが素晴らしいですね。

―(村山)僕が京北に来た25年前は、製材所などの関連業者さんは多数いましたけど、作り手としては、古くからの建具屋さんが少しいらっしゃるくらいでした。ここ15年くらいで、木工の作り手さんが京北全体で増えているように思います。それに、地域を盛り上げようとしている方や、アートやカルチャーの文脈で何かをやっている方なども増えてきていて、彼らが僕たち作り手を見つけてくれることで、新しい繋がりや取組が生まれている、そんな変化を感じています。

―(山崎)昨年(2023年)には、こちらのカフェ&ワーキングスペースもオープンされています。村山木工のショールーム的な役割をもちつつ、音楽イベントなどを開催されているのを見ていて、地域の文化拠点になっていくんじゃないかなと。

―(村山)僕は長年音楽をやっていたので音楽家の友達が多く、ここにも訪ねにきてくれて、ここで作曲をしたり、ライブをしたり。ミュージシャンだけでなくダンサーの友人にも、ライブパフォーマンスをしてもらっています。

―(山崎)村山さんにとっての音楽のように、ものづくりに加えて別のカルチャー要素を兼ね備えている作り手さんは、すぐ壁を飛び越えますね。

―(村山)もしかしたら、そういう企画もものづくりも、人を驚かせたい・楽しませたい、みたいな思いは共通しているのかもしれません。

―(山崎)京北がどういう産地になっていくか、今後も楽しみにしています。

山崎伸吾Instagram  https://www.instagram.com/ymsksng/
山山Instagram https://www.instagram.com/ymym_kyoto/?img_index=1
KYOTO CRAFTS MAGAZINE  https://www.kougeimagazine.com/
Kyoto crafts exhibition DIALOGUE  https://dialoguekyoto.com/
村山木工 https://www.mu-wood.com/

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