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TITLE2024.03.23

木と工芸 工芸ディレクター・山崎伸吾さんに聞く -中編-

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京都を拠点に、工芸にまつわるさまざまなプロジェクトを手がける、工芸ディレクターの山崎伸吾さん。近代化により生活様式が一変し、伝統産業が新たな局面を迎える今、「工芸と社会をいかに接続させるか?」山崎さんの活動には、この問いが通底していると言います。それを導きだす一つの挑戦として、山崎さんが2023年に取り組んだのが、福井県の県産材を使ったお箸の商品開発プロジェクトです。現地での実体験を通じて、山崎さん自らが地域の伝統産業としてのお箸の魅力を発見する、というプロセスを経て、新商品「おはしなおはなし」を生み出しました。どんな気づきや発見があったのか、詳しくお聞きします。

使うほどにCO2を減らすお箸

福井県のお箸の商品開発プロジェクトで誕生した「おはしなおはなし」について。具体的にどんなことをしたのか教えていただけますか?

―福井県には7品目の伝統産業があって(越前漆器、越前和紙、越前打刃物、越前焼、越前箪笥、若狭塗、若狭めのう細工)、その一つが若狭塗に代表されるお箸作りです。若狭塗とは、古くから福井県小浜市周辺に伝わる漆塗りの手法です。江戸時代初期に、若狭湾のそばに領地があった小浜藩の御用職人が、美しい海底の様子を図案化したものが起源とされていて、貝などを使ってきらびやかに加飾するのが特徴です。近現代以降は、それをお箸に施した「若狭塗箸」が地場産業として栄えてきました。そんな背景があって、お箸作りの職人が400年以上にわたり、ものづくりを行ってきたのが小浜市です。現在でも、小浜市では年間およそ1億膳のお箸が製造されています。

1億膳とは……。日本の人口にも匹敵する量のお箸が生まれる一大産地なのですね。

―はい。そのうちの、「スタイル・オブ・ジャパン」さんと一緒に商品開発をしました。彼らはこれまでにさまざまなお箸を製造してきましたが、2019年にはCO2削減と福井県産材に着目したお箸「Balance」を開発し、ドイツの国際見本市で審査員投票の1位に選ばれるなど、国外からの注目も浴びています。その延長で、2020年には新ブランド「hashi-coo」をスタートさせました。hashi-cooのコンセプトは「使うほどにCO2を減らすお箸」となっています。

Photo:Yu Ikeo

お箸は木材からできているので、CO2を吸収する木を切り出して使ったら、空気中のCO2は減るどころか増えてしまうように思うのですが、一体どういうことでしょうか?

―そもそも日本のお箸は、戦後のベビーブーム以降、99%が輸入産材で作られてきました。それも、安価で耐久性に優れているという理由で、パプアニューギニア産などの南洋樹が最も多く使われているそうです。その輸入コストだけでも、かなりのCO2を排出していることになるので、100%地域産材を使うというだけでも、そのCO2をまるっとカットできます。

お箸の材料が、遥か遠い国からの輸入材だったとは……知りませんでした。

―加えてhashi-cooでは、福井県産の天然杉の間伐材だけを、それも樹齢40年以上の木だけを使います。通常、杉の木は1本あたり年間14kgのCO2を吸収するのに対して、40年以上成長した木はCO2をほとんど吸わないんだそうです。古い木だけを切り出して使い、吸収量の多い若木を植え育てるというサイクルで、健康的な山林経営を進めよう、というのもこのプロジェクトの大きな狙いです。

認知されていない、という課題

Photo:Yu Ikeo

環境意識が高く、素晴らしい取組ですね。使うほどにCO2削減、というのも納得です。その上で、新商品開発の余地はどこにあったのでしょうか?

―このブランドのことを知って、いざ現地に行ってみると、地元の作り手さんや林業関係の方々としっかり一緒になって物作りをされている印象はとても受けたんですけど、スタイル・オブ・ジャパンさんが地域産材を使ってCO2削減していること自体は、福井県や小浜市の中ですら、ほとんど認知されていないように見受けられました。そこを可視化できるようにしたい、というのを商品開発の一つの目的にしました。
もう一つは、小浜って、もともと北前船が着港していたり、大陸からの海の玄関口としても栄えた港町であり、ものすごく豊かな食文化が育まれた場所なんです。現地を見聞きしてそのことを知った時に、それ自体がもう、小浜の誇りだと僕は感じました。その事実が、このパッケージにならないかなと思って、山と木と、食と海が繋がっているようなイメージを描きました。それは、まさにお箸だから繋げられることだし、お箸を介して、現代に生きる僕たちはその繋がりを知ることができます。そういうコンセプトから練り直して、このパッケージを考えていきました。

Photo:Yu Ikeo

それがこの「おはしなおはなし」なんですね。県産材を使って、若狭塗の職人が漆を塗っているお箸。そんなお箸を入り口に、地域に流れる歴史やそのなかで息づいてきた文化について知ることができる。なかなか読み応えがありますが、絵本のようで、すらすら目に入ってきます。

箸育にもなるお箸。広がりに期待

Photo:Yu Ikeo

お箸は毎日使うものなのに、材料も作り方も、さほど知られていないように思います。当たり前のように存在する上、シンプルな作りなので、知っているものと思われやすいのかもしれません。

Photo:Yu Ikeo

―そうしたお箸にまつわることや、お箸を通して見え広がる世界を、食育ならぬ、箸育と称して広めていけたら、という思いもこのプロジェクトの根底にはあります。

子どもから大人まで、日本人なら誰もが使うお箸。大人用と子供用を2膳セットで販売されていることからも、その思いが感じられます。

―最初はワークショップ型の商品になったらいいな、というアイデアもありました。お箸を通して地域のことを学べるワークショップを地域の小学校などで開いたり、もしくは、制作途中で節が発覚して廃棄処分になったお箸に、自分で拭き漆を施すようなワークショップとか、そういうことも、臨機応変にやっていきたいなと思っていました。プロジェクトの期間的に、実行には移せなかったのですが、せっかく良い商品が生まれたので、将来的にこのお箸がそういう方向にどんどん活用されていくと良いな、と思います。

次回は、山崎さんが近年、京北の作り手として注目しているという、村山木工さんを訪問し、村山木工の代表・村山伸一さんと山崎さんの対話の様子をレポートします。更新をお楽しみに。

山崎伸吾Instagram  https://www.instagram.com/ymsksng/
山山Instagram https://www.instagram.com/ymym_kyoto/?img_index=1
KYOTO CRAFTS MAGAZINE  https://www.kougeimagazine.com/
Kyoto crafts exhibition DIALOGUE  https://dialoguekyoto.com/
スタイル・オブ・ジャパン https://www.soj-inc.jp/
Hashi-coo https://hashi-coo.com/
おはしなおはなし https://savastore.jp/?pid=172469066

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