店舗に併設された工房でオーダー・オリジナル家具の製作も行っている「平山日用品店」。店舗には工房で制作した木製家具の試作品なども置かれています。前回に引き続き、平山和彦さん、真喜子さんご夫妻に市内産木材の印象や普段の活動についてお話を伺います。
■市内産木材の魅力とは?
―平山真喜子さん(以下真喜子さん)無垢の木で家具を作るとき、基本的に外国産の広葉樹を使っています。
―平山和彦さん(以下和彦さん)固さもあり、構造的にしっかりしたものが作れるという点が大きな理由です。
―(真喜子さん)お客様の要望にも合っていたのでずっと広葉樹を使って作っていたのですが、コロナで外国産木材が手に入りにくくなったタイミングで「国産材を使おう」となりました。その時に、せっかくなら京都の杉やヒノキを使ったシリーズがあってもいいのではと。展示会などで知り合った方から針葉樹を使っての制作の話も聞いていましたし、構造を考えれば充分使えるように作れるのではと考え、杉のベンチや、向きを変えて使い方を変えられるヒノキの椅子(「ごばんチェア」(※1))などを作りました。針葉樹の木材は軽く、例えば「USISU うすいす」(※2)はヒノキでできていて、ちょっと持って行って座ったり、お花を置いてみたりとか、家の中で持ち運びがしやすい定番品となりました。
(※1 ごばんチェア/公共施設などで使用することを想定した椅子。京都府主催の第4回Woodyコンテスト最優秀賞受賞)(※2 USISU /伝統的な木組みの技法を用いて薄い材で構成した平山日用品店オリジナルスツール)
―(真喜子さん)ヒノキは、仕上げにオイルやガラス塗料を塗ると少し黄色くなるんですね。ヒノキの綺麗な白っぽい木肌を楽しんでもらいたいとUSISUは無塗装にしています。木そのものに触ったり座ったりして経年変化を楽しんでもらいたいです。
和彦さん___ヒノキは特に爽やかな感じが綺麗だと思います。広葉樹には無い特徴ですね。今までメインで使ってきた広葉樹とはまた違った温かみというか、雰囲気の違いが面白いなと思っています。あとはやっぱり普段見えている景色の中の山の木が自分の暮らしの中に入ってくる。そういったストーリーをお客さんにも感じてもらえたらいいなと思っています。ストーリーを知っていればより魅力が深まるというか、 家具の使い方や感じ方も変わってくると思いますね。
実際、お客さまにもよく「国産木材ですか」って聞かれることがあります。国内で林業の存続など色々なことが問題視される中で、お客さまの中にはそういった意識を持ってくださっている方もいるのかなと感じます。林業の中でも若い世代には、国産材を活用した取り組みをされている方が各地にいらっしゃいます。そういう方と一緒に、自分たちの山を守る活動に繋げて回していきたいです。
■外国産と市内産(国内産)木材の違いについて
―(真喜子さん)外国産材は手に入りやすいという利点がありますね。使える材が安定して手に入るのであれば 、もっと国産材を使っていきたいと思っています。外国のように広葉樹を材料にするために山を作るというルートが無いので、なかなか安定して使えないという現状があります。
―(和彦さん)僕たちは色々なものを作るので、様々な木の種類や厚みが必要になります。 材料をストックしておける大きな材料庫があればよいのですが、現状、その都度必要な材料を手配しています。そうすると、国産材だと欲しい厚みの材がないということが結構あります。 となると、どうしても外国産材が選択肢に上がります。自分で丸太を買って製材したり、沢山ストックができる設備がある生産者の人たちだと国産材を取り入れている方もいますが、僕たちにはまだまだ使いにくさがあります。これから国産材が手に入りやすくなる仕組みができるといいなと思います。
―(真喜子さん)patol stoolは多くの材料は要らないんですよ。細い木が手に入ったらそれで一脚できます。そういった使い方で、色々な木で国産材シリーズを増やしていきたいです。
―(和彦さん)今日はこの魚が手に入ったから…」みたいに料理をする感覚に近いかもしれないです。今回はこの木が手に入ったのでこれで、みたいな。 そんな感じでもいいのかも。細かい話ですけど、国産材と外国産材の違いの一つに製材の丁寧さがありますね。外国産材は乾燥が結構きつかったりして中で割れていたり、質がわかりづらいものがあったりします。国産材だと値段が上がったとしてもロスが少なく済む。外国産材だとしても国内で製材して乾燥しているものは質がいいと思いますね。それでも製材所が廃業してしまうお話もよく耳にするので、僕たちや消費者も含めて国産材を使う量が増えればいいなと思います。
■「木のある生活の利点」とは?
―(真喜子さん)木ってあって当たり前な存在じゃないですか。あえて挙げるならベタですけど、人工物にはない温かみだと思います。あとは経年変化ですかね。
―(和彦さん)傷がつきながらも歴史として刻まれ、味わい深くなっていく点ですね。あとは、程よい距離感じゃないですか。壊れて終わりではなく、修理して手入れをしながら使っていけるところとか。ガラスのテーブルだと慎重に扱おうとか割れたら交換しなきゃとか思うところを、そうではなくて木は使いやすい距離感の素材なんだと思います。手触り、物を置くときの音、そういったことも含めて生活しやすい素材の一つだと思います。
■木と暮らすデザインと共にやりたいこと
―(真喜子さん)他県の事例で小径や曲がりがあったりする樹や街路樹などの材木市場では扱いにくい広葉樹の調達ルートができていて、そこから調達した材料を使って、家具を作るといったネットワークがあるそうです。大きなメーカーは使いにくいと思いますが、私たちのような木工家だとそんな取り組みにも対応できるので、木と暮らすデザインKYOTOパートナーの中にもいろいろな業種の人がいますから、そういったネットワークができると面白いと思います。
他のパートナーさんとも一緒に何かやってみたいですね。最近は、異業種の方とお話をするのがすごく楽しくて、木と暮らすデザインKYOTOでもきっかけがあればいいなと思います。以前、木と暮らすデザインKYOTOで開催されたイベントでkyo-aroma Breath(※3)さんに、木材を加工する最中に出る木屑から精油が取れるという話をお聞きして…すごいですよね。ちょっとしか取れないですけど、それを家具に塗って仕上げができたらめちゃくちゃいいですねって話をしました。他のパートナーの方とも一緒になって「めっちゃ面白いじゃないですか!」って。それぞれお店によってブレンドができたらいいですねって話して、実際そういうことができたらいいなって思いましたし、すごく楽しかったです。
(※3 kyo-aroma Breath/木と暮らすデザインKYOTOパートナー)
■「きょうと椅子 座ってくらべる木の椅子展」について
―(真喜子さん)今年10月下旬に、私たちのような個人工房の作家の椅子の展示をする予定です。「きょうと椅子」という名には「京都」「今日と」の2つの意味があります。京都の作家だけではなく全国の作家に展示をしてもらいます。京都らしい場所で開催するというテーマがあり、2024年は京都文化博物館で開催します。
―(真喜子さん)普段椅子を買う時、個人工房のものってあまり思いつかないですよね。私たちのような個人工房が1つ1つ作っている椅子に座ってもらいたいという気持ちからこの展示を続けています。 なので、どの椅子にどなたでも座れますし、在廊してる作家もいるので、話すきっかけを得て「こういう考えを持って作っているのか」という場になればと思います。4回も開催しているので、楽しみにしてくださっている方もいて嬉しく思います。どの椅子が好きでしたか?といったアンケートも取っていて、初めは「面倒だしやらないかな」と思いながらも始めてみたんです。そうしたら、皆さん結構真剣に1個1個座って、すごく楽しんでくださっているなとわかったので、アンケートは続けよう!となりました。多くの人は 個人工房の椅子や家具に触れる機会が少ないと思うので、1つのきっかけになっているなと感じています。
―(和彦さん)40人近い作家が集まり、前回はそれぞれ2脚ほど出展したのでおよそ80脚もの椅子が集まりました。本当に全部系統がバラバラなんですけど、アンケートで1票も入らない椅子って無いんですよ。みなさんにそれぞれ少なくとも1票ずつは入っていて、作る人も 座る人も、好みが千差万別だなと感じます。こういう世界を知ってもらって、面白いと思ってもらい、そこから「こういったものが暮らしにあったら、豊かになりそうだな」と思って取り入れてもらう。そんなきっかけになればいいなと思っています。ハードルが高いというかちょっと近づきにくい感じがあるとは思うので、気軽に足を運んでもらえたら嬉しいです。無理やり売りつけたりしないので(笑)座るだけでも来てもらえたらな。この椅子展でなくても、自分の暮らしに木を使ったものを取り入れようというきっかけになると嬉しいですね。
木工家、そして使用者という立場から「木と暮らす」生活と社会についての考えをお話いただきました。新しく家具を取り入れたいとお考えの方はぜひ、平山日用品店へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
「きょうと椅子 座ってくらべる木の椅子展」の詳細は、きょうと椅子公式サイトにて情報をご確認いただけます。ぜひご覧ください。
平山日用品店 https://hirayama-ten.com/
きょうと椅子 https://www.kyotoisu.com/
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